花鳥参拝帖

参拝した寺社の見どころや御朱印・おみくじの紹介

【島根】美保関めぐり・後編|佛谷寺~美保関灯台~沖の御前・地の御前

美保関の佛谷寺

美保関めぐり・後編は、山陰最古の仏像をまつる佛谷寺を参拝。続いて島根半島の東端、美保関灯台を目指します。歴史ある灯台から望む海は、国譲り神話が伝わる場所です。

佛谷寺

佛谷寺の門

美保関神社より青石畳通りを抜け、佛谷寺におまいりします。美保関めぐり・前編はこちらの記事をどうぞ。

www.hanatori-sanpai.com

三火の伝説と佛谷寺

佛谷寺の本堂

佛谷寺(仏谷寺)は龍海山三明院という浄土宗のお寺。創建は1200年前とされます。後鳥羽上皇・後醍醐天皇が隠岐へ配流されたとき、風待ちのため行在所とされた由緒のあるお寺です。

境内の大日堂(宝物殿)では、山陰最古の仏像を安置。国の重要文化財に指定されています。

お寺の略縁起によると、その昔、海中に三つの怪火が現れ、人々は「三火」、「みほ」と呼んで恐れていました。ちょうどそのころ、この地をめぐっていた行基がこれを封じ込め、みずから仏像を彫作されたと伝わります。

「美保」という地名の由来は、美保神社にまつられる三穂津姫命の名前からというのが通説のようです。そこに同じ読みの「三火」の説話があるのも興味深いですね。

佛谷寺の宝物殿

大日堂の仏像は常時拝観できるのかわからなかったので、念のため事前にお電話をしました。コロナ禍のさなか、お断りの可能性も考えてうかがったところ、ありがたいことにこころよく許可をいただけました。

当日は拝観の前に、ひとり300円の拝観料を納めます。あわせて御朱印もお願いし、帳面を預けます。ご住職に案内され、いよいよ仏像とご対面です。

出雲様式の仏像

佛谷寺の仏像

壇上の中央に薬師如来。むかって左手に虚空蔵菩薩聖観音菩薩、右手に日光菩薩月光菩薩が並びます。平安初期に制作された一木造りの仏像、五仏並ぶとなかなかの迫力です。順番に見仏していきましょう。

佛谷寺の薬師如来

まずは真ん中の薬師如来坐像から。ひたいの白毫大きいですね…伸ばすと1丈5尺どころじゃないんじゃ…。弓なりの眉、目は瞳より白目が印象的です。頬は張っていますが口は小さめ。螺髪はびっしりと、まるでニット帽を被るかのようです。

右手は施無畏印、左手には薬壺を持ちます。厚みある手指です。首には三道のしわ、丸いラインの胸の下には、これまた特徴ある二重しわの丸いお腹。左胸の衣のくるんとしたしわとともに、出雲様式と呼ばれる独特の表現です。

佛谷寺の虚空蔵菩薩

虚空蔵菩薩立像はとくにこの形が際立って目につきます。天衣がくるんくるんとしていますね。両足の裾あたりの衣文も、波打っています。仏師はきっとこだわりがあったのだろうなぁなんて思ったり。

ちなみに後ろ側も回って見ることができますが、こちらもすごいです。

佛谷寺の聖観音菩薩

お隣の聖観音菩薩立像は、虚空蔵菩薩ほどくるんくるんはありませんが、丁寧な表現の衣文です。いくぶん薄く、なめらかな感じですね。髪の生え際は簡素ですが、肩に長くゆらゆらとかかります。

こちらの仏像だけ胸に宝飾(瓔珞)があり、若干ゴージャス。持物の蓮の花もあります。お顔は鼻が大きめ、唇がツンと目立ちます。

佛谷寺の日光菩薩

むかって右側の日光・月光菩薩立像はすらっと細身です。特に日光菩薩は腰が細く、等身が高い。手も長く、それにともなって天衣も細く長くかかります。

腕の脇のあたりが少しだけくるんとしてますね。お顔は小さいですが、やはり鼻は大きめ、唇は突き出し気味かな。

佛谷寺の月光菩薩

お隣の月光菩薩立像は、腰や背中は細いけど肩は張り気味。下半身は日光菩薩と比べると、若干しっかりめ。右肩にかかるの天衣の表現がダイヤ柄のようでおもしろい。

目が横に長く、お顔はなんとなく素朴な印象です。

いやぁこの五仏、それぞれ個性ありすぎじゃありませんかね…物覚えの悪いわたしでも、一目でお顔覚えますよ?

佛谷寺の阿弥陀如来と毘沙門天

檀の下、むかって右手は阿弥陀如来、左手には毘沙門天をまつります。阿弥陀如来は少し痛みあり、毘沙門天は丸っこい体型ですね。

写真撮影もご自由にとのことで、じっくりと拝観させていただきました。ありがとうございます。

佛谷寺の御朱印

佛谷寺の御朱印

境内ほかにも、八百屋お七の恋人、吉三のお墓があります。

お七が江戸で刑に処せられたあと、冥福を祈るために吉三は巡礼の旅に出たそうです。

佛谷寺の吉三の墓

元文二年(1737)佛谷寺で七十歳で入滅、ここに葬られたと伝わります。

基本情報

龍海山三明院 佛谷寺

所在地:島根県松江市美保関町美保関530
拝観時間:不明
公式サイト:なし
TEL:852-73-0712

美保関灯台

美保関めぐり、最後に島根半島の東突端を目指します。潮風ラインと名付けられた海沿いの道を車で走ること約5分、灯台駐車場に到着。徒歩では約30分かかります。バスはゑびすライナーの停留所がありましたので、くわしくは美保関の公式サイトをごらんください。

美保関町観光公式サイト|バス時刻表

美保関灯台と海

駐車場近くの展望台より、海と灯台。青い空と海に、白い灯台が映えます。晴れた日には隠岐島を望むことができるそうですが、ちょっと沖合はかすんでいてわからないですね。

美保関灯台

美保関灯台は明治三十一年(1898)に建てられた、山陰最古の石造りの灯台。地上から灯台までの高さは約14m、水面からの高さは約83mです。「世界の歴史的灯台100選」に選ばれるほか、現役の灯台として初めて登録有形文化財に指定されました。内部はふだんは入れませんが、海の日のみ一般公開されるとのこと。

隣接された赤い屋根の家は旧事務所と宿舎。現在はビュッフェに改築されています。海を眺めながらゆったりと食事できるのはいいですね。こちら、入り口すぐのところに初代の一等レンズが展示されていますので、あわせて是非。

沖の御前・地の御前

沖の御前・地の御前

展望デッキをぐるりとまわると、灯台の奥に鳥居があります。こちらから約3km先の海上に浮かぶ島が沖の御前、眼下に横たわる島が地の御前美保神社御祭神の事代主神が魚釣りをしていた場所と伝えられており、どちらも神社の飛地境内です。

沖の御前はわからなかったのですが、地の御前は見下ろしたところに確認。毎年5月5日にはふたつの島の神を船でお迎えに行き、美保神社本殿の左右両殿の間にある大后社・姫子社に迎える神迎神事が執り行われます。

わたしは山の民なので、海の近くの神社にまいると気持ちソワソワします。山も海もどちらも違った良さがありますね。

美保関めぐりルートとマップ

この日の美保関での行程です。

美保関めぐりルート

美保神社~青石畳通り~佛谷寺~美保関灯台~沖の御前・地の御前

なかなか遠い道のりでしたが、訪れたかいがあった美保関。お天気にも恵まれ、良い思い出になりました。

個人的な感想でざっとまとめた記事ですが、散策の参考にしていただけたらうれしいです。