高野山霊宝館の開館100周年記念大宝蔵展では、弘法大師ゆかりの宝物や運慶・快慶作の仏像など、ふだんは目にすることのできない文化財を一挙公開。特別御朱印もいただきました。
大宝蔵展「高野山の名宝」
真言密教の聖地・高野山にある高野山霊宝館。大正十年(1921)に開館、今年で100周年をむかえます。
これを記念して、収蔵する国宝・重要文化財から選りすぐりの宝物が公開されています。
出陳は1~4期に分かれ、最後の4期展示は11/28までとなっています。
発表されたときから「絶対行く!」と意気込んでいましたが、新型ウイルスの影響もあり、ようやく4期展示を観覧。
正直、ここまでまとめて公開されることはもうないんじゃないかしら…と思ってしまうぐらい、豪華な展覧会でした。
高野山霊宝館でいただける御朱印
高野山では奥之院はじめ、さまざまな場所で御朱印がいただけます。高野山霊宝館では通常の御朱印のほかに、開館100周年記念の特別朱印がいただけます。
通常の御朱印
特別御朱印
八大童子御朱印の授与期間は令和三年(2021)4月~令和四年(2022)3月末日までです。
そのほか、霊宝館開館日の令和三年5月15日のみいただける御朱印もあった模様。
御朱印は通常、入館受付時に帳面を預けます。霊宝館入らずに御朱印だけお願いするかたは、書置きのみらしい。個人的には、拝観せずに帰るなんてスタンプラリーかよ! と思いますけどね…あぁすみません、つい本音が。
運慶・快慶作の仏像
霊宝館は新館と本館に分かれています。新館では地蔵院の阿弥陀如来坐像にはじまり、数々の彫刻が並びます。
いちばん印象に残るのは、やはり快慶作の執金剛神立像と深沙大将立像です。憤怒の表情、躍動感ある表現がすばらしい。
四天王立像とともに常設の展示と思いますが、何度観てもあきない魅力ある像です。
今回は中央に同じく快慶作の孔雀明王像も安置。伽藍・孔雀堂の御本尊であった像は精悍なお顔と体つき。また孔雀が力強い…光背の羽根をはじめ、彩色もきらびやか。
この1室だけでも、来た甲斐じゅうぶんあった! といってもいいのではないでしょうか。
孔雀堂
しかしこれはまだほんのはじまり。続く2室には運慶の傑作が。
伽藍・不動堂の元本尊、不動明王坐像と八大童子像です。
今回の八大童子像の展示は、こんな感じです。写真は露光時間が長く、少しオーバーな表現になっています。 pic.twitter.com/VGGtSj8Z8T
— 高野山霊宝館 (@koyasan_reihoka) April 15, 2021
まるでお堂のなかにいるような、濃密な展示空間です。
ずっとお会いしたかった八大童子は、どの像も個性的。童子らしく、お顔・体つきはややふっくらと。髪型や表情も、単純なようできめ細やかに表現されています。みなさんどの像推しですか…わたしは矜羯羅童子派!
展示の高さもちょうどよく、ぐるぐる何周もしてしまいそうに。この1室だけでも来た甲斐…あ、さっきも言いましたっけ?
不動堂
不動明王坐像と八大童子像については、今月発行の金剛峯寺公式ムック「KUKAI」でも特集があるそうで楽しみです。
弘法大師・空海ゆかりの三大秘宝
新館最後の3室には書跡なども展示。弘法大師の三大秘宝と呼ばれる宝物が、まとめて出陳されています。
そのひとつが聾瞽指帰(ろうこしいき)。題名には「仏の教えに暗く、耳を傾けない者に教え諭す」という意味がこめられています。弘法大師24歳のときに書かれた出家宣言書とのこと。
端正かつ勢いも感じられる文字。ところによって大きさも違い、若き空海の意気込みまで伝わってくるかのようです。
秘宝二つ目が金銅三鈷杵。弘法大師が唐より帰国する際、密教を広めるための場所を選ぶために三鈷杵を投げたところ、高野山の松にかかったという伝承が。そのため、飛行三鈷杵とも呼ばれます。
先がちょっと折れているのは…投げた影響ではありませんよね。笑
また収納する箱の衣装もすばらしい。松木の金の盛り上がり加減が好きなのですが、図録に載ってないのが残念。
三鈷杵がかかったと伝わる「三鈷の松」は、伽藍の御影堂前に立ちます。三葉の松の葉を持ち帰ってお守りにするとよいそうですよ。
秘宝三つ目が諸尊仏龕(しょそんぶつがん)。弘法大師が恵果阿闍梨から授かり、唐より持ち帰ったものといわれます。
高さわずか23センチ、3分割された白檀の龕に、如来や菩薩・脇侍仏・僧などがびっしりと掘りあらわされます。細かすぎて、見てるだけで息止めそうになってしまう…
中国で造られたものだそうですが、インドの雰囲気も色濃くあります。
そのほか4期限定の出陳としては白鳳時代の阿閦如来立像や、浅井久政・長政・長政夫人像も。お市の方の肖像画といえば、コレですよね。
最古の仏涅槃図も
まだまだ紹介しきれていませんが、次は本館に行きます。霊宝館開館当時に建てられた本館は、建物自体が有形文化財になっています。
谷上大日堂にまつられていた大日如来坐像・阿弥陀如来坐像・釈迦如来坐像の三尊がお出迎えくださる放光閣。天井のレリーフが天蓋のよう、おごそかな雰囲気ある空間です。
こちらでもたくさんの仏像を拝観。伽藍西塔にあった大日如来坐像は、高野山に現存する最古の彫像といわれます。
西塔
2メートルを超す不動明王立像と毘沙門天立像も存在感あり。高野山の不動明王バリエーションの多さよ…! 個人的には巻き毛不動がたくさんあって好き。
そんなこと考えつつ、ようやく最後にたどりついたところが紫雲殿です。御朱印の墨書きはこちらが由来なのですね。
紫雲殿では絵画がずらりと展示されます。
4期限定の目玉は仏涅槃図。応徳三年(1086)の銘があることから、現存最古の涅槃図とされています。
見上げるわたしの両側には両界曼荼羅図(血曼荼羅)の再生版が。ほんとうは現物が展示される3期に行きたかったのですが、いやいや、再生版の鮮やかな色彩もすばらしい。
とはいえ、1期の阿弥陀聖衆来迎図や2期の五大力菩薩像も観たかったなぁ…。また公開されたときにはぜひ伺おうと思います。
基本情報
高野山霊宝館開館100周年記念大宝蔵展「高野山の名宝」
会期:令和3年(2021)4/17~11/28
会場:高野山霊宝館
開館時間:5~10月 8:30~17:30、11~4月 8:30~17:00
拝観料:一般 1300円、高校・大学生 800円、小・中学生 600円