紀伊山地・高野参詣道のひとつ、三谷坂のはじまりにあるのが丹生酒殿神社です。御神木のイチョウは参道にもかかる見事な枝ぶり、秋にはライトアップもされます。
丹生酒殿神社の御朱印
拝殿に書置きの御朱印が置かれています。日付は自分で書き入れるタイプです。
丹生酒殿神社の見どころ
和歌山県かつらぎ町にある丹生酒殿神社。わたしがこちらの神社を知ったのは、一冊の本からでした。
寺社へのさまざまな奉納品が紹介される『奉納百景』。その表紙には、たくさんの鎌が刺さる大木の写真が。インパクトあるこの御神木、実際に見てみたい!と、ひそかに心のなかの「いつか行きたい寺社リスト」に入れていました。
家族に「ここ、行きたいんだよね」と表紙を見せたところ、明らかにビビる旦那。が、「大きなイチョウの木も素敵らしいよ~」とうまいこと言いくるめ、車で出発。
公共の交通機関を使うなら、最寄りのJR和歌山線妙寺駅よりコミュニティバスがあります。バスの本数は少ないのでご注意ください。
直前に神社のほうへ入る道のみ、少し狭め。車は境内のむかって左側、お手洗いの前に3台ほど駐車できるスペースがありました。
丹生酒殿神社と御神木・大銀杏
まず視界に飛び込んで来るのが、イチョウの御神木です。想像以上に大きい…!
樹齢は800年と伝わりますが、枝の伸び具合も大きく、緑の葉もボリュームたっぷりです。参道にかかる構図も美しく、風情ありますね。
わたしが参拝した日はまだ暑い盛り。イチョウはこれから緑から黄色に変わり、秋は落葉の風景が人気とのこと。これだけ大きな木だったら、落ちる葉の量もすごいでしょうね…。11月下旬にはライトアップもされます。
\丹生川殿神社のイチョウが見頃を迎えています/
— かつらぎ町商工会🍊わかうまショップ (@katuragi_net) December 5, 2019
かつらぎ町が誇る樹齢300年以上、高さ約25mの大イチョウ。落葉が始まり黄色の絨毯が広がっています。
今しかみられない絶景を是非!!
・ライトアップは12月上旬迄(日没〜20時)
・神社前に数台駐車可(道が狭いのでご注意下さい)#丹生酒殿神社 pic.twitter.com/vWiQ0fUlrH
…と、いきなり御神木に圧倒されましたが、まず神様におまいりしましょう。
丹生酒殿神社の主祭神は丹生都比売大神(にうつひめおおかみ)。天照大御神の妹神で、稚日女命(わかひるめのみこと)ともいわれます。神社のある榊山の地に降臨、農耕や糸紡ぎ・機織りなどを人々に教えられました。
神社名は、木の川(紀の川)の水でお酒を醸造し、神に供えたことに由来するそうです。
丹生酒殿神社より笠松峠を越える高野参詣道三谷坂の先には、紀伊国一之宮・丹生都比売神社があります。こちらの御祭神も丹生都比売大神。過去には丹生都比売神社の神職が、丹生酒殿神社から三谷坂を使って通っていたそうで、深いつながりがあると考えられています。
平成二十八年(2016)には世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に、丹生酒殿神社境内を含む三谷坂が追加登録されました。
拝殿には由緒書や書置きの御朱印、鎌八幡の絵馬などが置かれています。壁には絵が描かれた大きな奉納絵馬が。ちょうど御朱印を補充に来られた氏子のかたより、お話を聞くことができました。
こちらは江戸時代、高野山で半年ごとに行われた八幡神の御神体を巡寺する様子を描いた絵馬。もとは兄井にあった鎌八幡社に奉納されたものだそうです。
よく見ると右上の門に「八幡宮」とあり、そこから左のほうへ向かって人々が松明などを抱え、行列を作っています。細かく持ちものまで描いてあり、当時の様子がよくわかりますね。列は左端にあたって右へ折り返し、反対側まで連なっています。
絵馬の左上あたり、袈裟を着た僧が三人がかりで抱えている熊手が見えるでしょうか。こちらがいまは本殿向かって左にある社(熊手八幡)に収められているそうです。
ちなみにその後ろ(左下)、僧がそれぞれ捧げ持つ剣と弓は高野山にあるとのお話。「熊手は見ることはできないけれど、剣と弓は高野山で機会があるかも?」とおっしゃっていました。
ほかにも本殿の前にある古い灯籠や鎌八幡のことなど、丁寧に教えていただきました。丹生酒殿神社はいまは神職のかたは常駐せず、氏子の方々で管理されているとのこと。境内美しく清められており、地域の人々と神社のつながりを感じます。
お話をうかがいはじめたときに降り出した小雨が、ちょうど終わりにやんだ不思議。「ちょっと話を聞いていきなさいよ」と、神様が結んでくれたご縁かもしれませんね。
鎌を打ち込んで祈願・鎌八幡
さて、当初の目的を忘れかけていますが、鎌八幡です。ちょうど本殿の後方にありますので、境内右からのびる参道よりまいります。
神社の植物は先ほどのイチョウがいちばん有名ですが、このあたりのアジサイも美しいそうですよ。
鎌八幡宮の御神木は櫟樫(イチイガシ)。こちらの木自体が、神霊宿る御神体になります。幹には数えきれないほどの鎌がびっしりと。刃に輝きのある新しいものから、かなり錆びた古いものまで、長い年月をかけて奉献されているようです。
鎌が幹に食い込んでいくことで願いが成就するとのこと。無病息災などの気長な祈願が多く、縁切りなどのすぐに叶えてほしいことには向いていません。
また私欲の都合など、不適切な言葉の入ったものは除去するとの注意書きもあり。そのためか、あまり恐ろしい気は感じられないです。当初ビビっていた家族も「すごいね~」と写真をパチパチと。
とはいえ写真で見返すと、なんともいえない迫力があります。
現在は鎌ではなく、絵馬に願い事を書いて奉納します。鎌を打ち込むという願掛け法は昔からあるものだそうですが、御神木保護のためには納得の方法ですね。
あわせて行きたい 近くの寺社めぐり
丹生酒殿神社の向かい側に真言宗のお寺、龍谷寺があります。御本尊は大日如来。
お堂の外からの参拝になりますが、御朱印は書置きがケースに入れてあり、受けることができます。
またあわせて丹生都比売神社に参拝されるのもおすすめです。かわいらしい犬のおみくじもいただけますよ。
基本情報
丹生酒殿神社
所在地:和歌山県伊都郡かつらぎ町三谷631番地
拝観時間:不明
公式サイト:なし