京都東山、東福寺駅近くに鎮座する瀧尾神社。拝殿の天井には巨大な龍が棲みます。祇園祭・大船鉾の船首モデルにもなったという、迫力ある彫刻は必見です。
瀧尾神社でいただける御朱印
瀧尾神社の御朱印
三嶋神社の御朱印
境内にある祈願所・三嶋神社の御朱印もいただけます。
瀧尾神社の見どころ
10月下旬のある日、JR・京阪の東福寺駅へ降り立ちました。紅葉の時期には多くの乗降客でにぎわいますがまだ見ごろには早く、人通りも少なめです。
この日いちばんの目的は、泉涌寺の塔頭へ参拝することでした。まずは近くの神社へごあいさつしようと、瀧尾神社へ。駅からはすぐ、徒歩3分もかからず鳥居が見えてきます。
以前、瀧尾神社へ参拝したのは平成三十年のこと。そのときの写真があまりなく、もういちどちゃんと撮影したいと思っていたところでした。が、あれ、なんだか雰囲気が違う…?
社殿のいたるところに、足場組みやフェンスの囲いが。どうやら本殿の改修工事のようです。
掲示によると、しばらくのあいだ本殿より拝殿に神様をお遷しして、こちらを仮本殿とするとのこと。またよりにもよってなタイミングの参拝となってしまいました。
そんなわけで、紹介する写真は新旧まぜこぜとなっています。ご了承くださいませ。
商売繁盛のご利益
神社の主祭神は大己貴命(おおむなちのみこと)。ほかに大黒天(大国主命)、弁財天、毘沙門天をまつります。
創建や由来はよくわからないそうですが、もとは洛東にあった武鶏社(たけうのやしろ)が応仁の乱で焼失、日吉坂に移転したのちにいまの場所に移られたとのこと。
現在の社殿は江戸時代の後期、京の商人・下村家の寄進によって整備されました。下村家はいまの大丸を創業した豪商家。創業者・下村彦右衛門が行商のころより欠かさずおまいりしていた神社だったそうです。その後、大丸が栄えたことから広く崇敬されました。
神社のご利益は商売繁盛。大丸にあやかって、祈願されるかたが多かったでしょうね。絵馬舎には当時の姿でしょうか、大店がにぎわう風景が描かれた絵馬も奉納されています。
拝殿外側にかけられるたくさんの提灯も、いちばんいいポジションは大丸です。
本殿の彫刻・拝殿の龍
下村家によって造られた本殿ですが、もとは貴船神社の奥院旧殿を移築したものといいます。境内の建物は拝殿などもあわせて、京都市文化財に指定されています。
重厚な屋根が連なり、金の装飾も美しい。細やかながら、立体的な彫刻も見事です。
正面は鳳凰、その奥には松に鶴でしょうか。両脇の鳥もいまにも飛び立ちそうな雰囲気です。
なかでも拝殿の天井にある龍は、いちばんの見どころ。現在は仮本殿となり、全体少し見づらくなっているので、以前の写真でご紹介。
天井に張り付くように、ぐるりと長い身体をひねっています。かっこいい…!
ぎょろっとした目、大きくうねる髭。頭・身体をおおうウロコはひとつひとつが盛り上がり、躍動感あふれます。
これらの彫刻は江戸時代の後期、九山新太郎によって制作されました。彫物師・九山家の一派は祇園祭・大船鉾の船首の龍頭も手がけたと伝わり、天井龍はその予備に作られた兄弟龍ではないか考えられています。
大船鉾は禁門の変で焼失してしまいましたが、平成二十八年(2016)に龍頭を復元。瀧尾神社の龍を参考に、九山家現在の当主・九山新之丞によって再現されました。
以前、祇園祭で撮影した大船鉾・龍頭の写真です。現在はこの龍頭と御幣、1年ごと交互に掲げているようです。
大船鉾については、こちらの保存会のサイトもご参考までに。
京都・祇園祭「大船鉾」 | 公益財団法人 四条町大船鉾保存会
瀧尾神社では、この龍にちなんだ置物型のおみくじも引けます。参拝の記念に、あわせてぜひ。
安産・子授けの三嶋神社
本殿にむかって左側には、三嶋神社の祈願所が鎮座します。
三嶋神社の御祭神は大山祇大神(おおやまづみのおおかみ)、天津日高彦火瓊々杵尊(あまつひだかひこほのににぎのみこと)、木之花咲耶姫命(このはなのさくやひめのみこと)。
あらゆる生物の出生・生育・放生を守護するとされ、安産や夫婦和合・子授けのご利益があります。
そのはじまりは平安時代。後白河天皇の中宮・平滋子(建春門院)は皇子に恵まれないことを嘆かれ、三嶋大明神を崇敬されたところ、高倉天皇が誕生。喜ばれた後白河天皇が、摂津国にあった三島鴨神社を山城国に勧請しました。
以来、宮中はじめ一般庶民にも信仰され、現在にいたるとのこと。平成に入っては秋篠宮殿下・紀子妃殿下もご参詣されたという、ご神徳ある神社です。
本宮は京都市東山区東大路通東入上馬町3丁目に鎮座。こちらはまだうかがったことがないので、機会をみつけて参拝したいと思います。
神使い・ウナギ
さて恒例の(?)絵馬掛けチェックですが、三嶋神社は実におもしろい。
ウナギ
うなぎ
鰻!
さまざまな図柄のウナギ絵馬がたくさんです。三嶋明神の使いは、ウナギなんですね。
神社では毎年10月26日に、鰻放生大祭もおこなわれます。
置いてあった由緒略記によると、摂津国にあった三島鴨神社には水蛇(牟奈岐)が生息。三嶋神社でも神池に多くいたとのこと。
妊婦はウナギを食べるのを絶ち、神前に供えて祈願します。安産成就のお礼まいり後にウナギを食べ、身体を回復させたそうです。いまは生きたウナギを供えるかわりに、絵馬を奉納するのですね。
ちなみに3匹の絵馬は、父と母のあいだに子供が生育する姿を表した安産祈願。背中合わせで絡み合う絵馬は夫婦和合を表し、子授け祈願。そのほかは、毎年の放生祭ごとに絵柄が変わるそうです。
境内、奥には摂末社が並びます。ひとつ屋根の下に、瀧尾天満宮・金刀比羅宮・大丸繁栄稲荷・愛宕神社の祠。そのとなりには妙見宮も鎮座します。
おまいりをすませ、最後に授与所で御朱印を…と思ったところ、本日不在との張り紙。折しも参拝は10月27日、放生祭の翌日でした。先に紹介した御朱印は、以前にいただいたものです。
余談ですが、こちらの宮司は占い師としても有名なかたとか。御朱印拝受のときは、ちょうど鑑定の最中のようでした。興味のあるかたは、うかがってみてはいかがでしょうか。
あわせて行きたい 近くの寺社めぐり
瀧尾神社の周辺は東福寺・泉涌寺などの寺院があり、それぞれの塔頭も多く建ち並びます。
また京都三熊野のひとつである新熊野神社、疳封じの剣神社も近く、御朱印もいただけます。
基本情報
瀧尾神社
所在地:京都府京都市東山区本町11-718
拝観時間:不明
公式サイト:なし